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最後の一色
第17章 25日目は夜まで・・
涼輔はそっと美紗緒の横顔を窺う。
一瞬、虫の音が止まる。
ザワッと風になびく葉音に誘導されるように、美紗緒は涼輔のほうに顔を向けた。
「どうしたの?」
涼輔がなにを考えていたのか、知る由もないと言った顔つきで、小首をかしげる美紗緒。
「ううん、別に・・時間、大丈夫?そろそろ駅まで送っていくよ」
グラスのアイスティーを飲みほし立ち上がろうとする涼輔の腕を、美紗緒は掴んだ。
「まだ・・もう少し・・だってまだ何もおしゃべりしてないじゃない?」
すがるような目をむけながら、しっかりとグラスを握っている。
まだ半分残っているグラスの中身を見せつける。
もう少し、ここに座っていたいと訴えるように。
「私、ここへ来て・・ううん、お仕事させてもらって、
ほんとうによかったって思ってるの。
毎日毎日、一人の時間のほうがはるかに多くて・・
そんなことよりも・・あなたに出会えたことが・・」