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最後の一色
第17章 25日目は夜まで・・
これまで・・
恋に身を焦がしたことはない。
唯一の恋愛といえば夫・康文との恋愛だ。
25歳で康文と付き合うまで、恋人、と呼べるほどの相手はいなかった。
男達はみな、美しすぎる美紗緒にどこか気おくれしてなかなか深い仲にはなれなかった。
そう・・
美紗緒にとって康文が、初めての男なのだ。
若い美紗緒に、30を過ぎた酸いも甘いもわかっている大人の男は
一から十までの愛を教え与えた。
しっかりと教えてくれたのは夫となった男だった。
静かに燃え上がらせた恋。
安定の器の中で徐々に大きくしていった恋。
そんな恋が結婚へと形を変えたのだ。
だから、美紗緒は恋の苦しさ、愛するゆえに直面する壁、そういった困難を知らない。
夫がありながら他の男に心を奪われるなんて、想像すらした事がなかった。
それなのに、私はあの人を好きになってしまった・・
もう気持ちが止まらない・・
床に座り込んだまま美紗緒は、しばらくの間
そのままじっと時をやり過ごした。
元に戻るかしら・・そう願いながらじっとしていた。
でも、美紗緒の心の中から
涼輔が出ていくことは・・なかった。