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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日
平日とはいえ、夜にむかって時間の流れる銀座大通りは、人の波が寄せては返していた。
だが目的の細い路地を見つける頃には、人影もまばらになっていた。
名のついた通り沿いのビルの隙間にひっそりと道を開く。
涼輔に背中を押され、針に糸を通すような気分で路地に足を踏み入れると、
小さな看板が目に入った。
「Gallery・雫」
ほんのり灯る丸い電球の下に立つと、中が簡単に見渡せるほどの
小さなギャラリーだった。
自動ドアの音を聞いてか、奥から男性が出てきた。
男性は、美紗緒の後ろに涼輔の姿を見つけると、
平淡だった表情をくずし、目じりを下げた。
「田原さん、いらっしゃい。お久しぶり」
「佐竹さん、ご無沙汰してます」
「今日は・・おめずらしい、こんなに美しいお連れ様がいらっしゃるとは」
画廊のスタッフ・佐竹は、涼輔の一歩後ろで控えめに微笑む美しい女に、
興味の視線を浴びせかけた。