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最後の一色
第2章 男が求めるのは

「では、引き受けていただけるという事で、もう一度あらためてお願いします。
 裸婦画のモデル、時給1万円、毎日一時間。
 付け加えますが、もしも筆がのって時間を超えたら
 いわゆる残業、ですかね、をお願いします」

「わかりました。ただ、お願いなのですが」

「なんでしょう?」

少し不安げな面持ちで田原は首をかしげる。

「残業代は無し、という事で」

「え?」

「だって・・時給1万円自体ありえないでしょ、普通・・
 残業といっても1~2時間のことでしょうから
 時給に込みという事でお願いします。
 そうじゃないと申し訳なくて、引き受けられません・・」

弱々しく見せながらも意志の強い瞳で男を見返す。
美紗緒は膝の上の手のひらを握った。

お金は欲しい、必要だ・・
でもあまり欲張りすぎるとバチが当たりそうで怖かった。

その眼差しの強さに、田原はフッと笑って折れることにした。


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