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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日
画廊を後にして次に涼輔が案内したのは、大通りの少し手前で
小さな路地を入ったところにある、小料理屋だった。
カラカラと音をたてる引き戸を開ける。
白木のカウンターの内側から女将が声をかける。
「いらっしゃい、よかったら奥、どうぞ」
カウンターが空いていたが女将は気を利かせてか、
壁際にある小さな座敷を、着物の袖を押さえながら指し示した。
ありがとう、ビールとグラス2つね、と涼輔は軽く手をあげ、
美紗緒の背に手を添えて奥の座敷へと進んだ。
すぐにビールを運んできた女将に、お任せのつまみを2つ3つ注文すると涼輔は、
ビールの瓶を掴んで、
「さぁまずは乾杯しましょう」
美紗緒は促がされると、切り子のグラスに両手を添えて控えめに差し出した。
美紗緒のグラスに注いでから自分のグラスに手酌しようとすると、
今度は美紗緒が瓶を掴む。
差し出すグラス越しの涼輔の顔は、
互いのすべてを知りつくした達成感にあふれているように見えた。