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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日
「今日まで1ヶ月間、毎日アトリエにかよってきてくれたおかげで
思った以上の絵が描けました。そのうえ家の事までしていただいて・・
1ヶ月間、ほんとうにご苦労様、ありがとう」
グラスの合わさる涼やかな音が、すべての終わりの合図のような気がして、
美紗緒は少しこみ上げるものを感じた。
ここまで毎日アトリエに通い、モデルの仕事をやり抜いた。
はじめて涼輔の前で裸をさらす時、頭の中が真っ白になるほど恥ずかしかった。
だが毎日のように肌をさらし見つめられると、
しだいにそれが心地のいいものになってきた。
そして・・
田原涼輔という男に魅かれていった。
少しでも長く一緒にいたいと思うようになった。
彼に抱かれたい、と思うようになった・・
そしてついに今日、想いは遂げられた。
一人の男として自分を求め、甘味を与えてくれた。でも・・
これが最後なのだろうか・・
最初で最後・・
そう思うと、こみあげるものは徐々に大きさを増して、
今にも流れ出しそうなほど美紗緒の心を揺らす・・
涼輔に声をかけられ、美紗緒もビールを口にする。
小さなグラスの中のビールを半分以上飲み干すと、それを見た涼輔が
嬉しそうに注ぎ足してくれた。
「いい飲みっぷりですね。いつか言ってたでしょう?大酒のみだって?」
「まぁ、意地悪ね、冗談だっていったのに」
唇をすこし尖らせると、涼輔は目じりをさげてコロコロと笑った。