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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日


2本目のビールと小鉢の料理が運ばれてきてから、
じつは、と涼輔は切り出した。

「じつは・・来週から少し日本を離れます」

そういうと、グラスのビールを飲み干してから手酌でビールを注いだ。

その動きを目で追いながら、美紗緒は震える唇を必死で動かし問いかけた。

「日本を離れるって・・どこへ行くの?」

「・・パリの友人のところへね、2、3ヶ月。
 彼は美大時代の友だちなんだけど、パリで知り合ったフランス人女性と結婚してね。
 画廊を経営してるんだ。そいつのところへ。
 その後他の国を少し周って。2月の絵画展の発表までには帰ってくるつもりだ」

パリ行きは、1週間前に決めたばかりだった。

次第に美紗緒に魅かれている自分に気がつき、
最後の一色として彼女とひとつになろうと決めた時に、パリ行も決めた。

絵が完成して、二度と会えないわけではないが、いつでも会える状態にあればきっと、
自分か彼女が行動を起こす。
炎の勢いが止まらないうちに油を注ぐような真似をしたら・・
許されざる恋に溺れてしまう・・




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