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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日
だから、時間を置こうと決めたのだ。
少し熱を冷まそう。
鉄も冷えてくれば打てなくなる。
いい友達として付き合っていける。
それが彼女を苦しめない一番の方法だ。そう涼輔は信じている。
だが、美紗緒は今にも泣きだしそうな顔で涼輔を見つめた。
「じゃあ・・半年近くも会えないのね・・」
会いたい。
毎日じゃなくてもいいから、顔を見たくなったらアトリエに行こう、そう思っていたのに。
数時間前、この肌を熱らせた男の肌がすでに恋しいのに・・
夫以外の男に、いや、夫しか男を知らなかった自分の体に、
官能の喜びを教えてくれた、愛しい男。
結ばれないとわかっていても、彼を思う気持ちを抑えることはできない・・
「帰ってきたらまた会えるじゃないですか。いつでもアトリエに遊びに来てください。
春の庭はちょっと自慢できるくらい花が咲き乱れますから」
瓶ビールを差し出す涼輔に、グラスを差し向けることもできずにうつむいたまま、
美紗緒は小さく頭を動かした。