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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
「もしもし」
変わらない、柔らかい声・・
「もしもし・・美紗緒です」
名を名乗っただけなのに、それでも懐かしさと嬉しさからか涙が押し出されるように
流れ落ちる。
震える胸にグッと手のひらをおしつけ、
これ以上涙で声を詰まらせないよう懸命にこらえた。
懐かしさに震える声を聞いて涼輔もまた、こみあげるものをひしひしと感じていた。
胸が詰まる想いは涼輔も同じだった。
禁断の愛を薄く小さくするために半年近くの時間をかけた。
異国の空の下で新鮮さ、物珍しさに気をとられることで
美紗緒への気持ちを紛わせた。
帰国して顔を合わせたら、大切な大切な友人の一人として付き合っていこう・・
その決意は今美紗緒の声を聞いても揺らがないが、
一度芽生えた恋情は消えてはいないことを思い知った。
「美紗緒さん、ただいま!」
涼輔は声を弾ませる。
「おかえりなさい。いつお戻りになったの?」
「昨日です。昨日帰ってきたばかりで。元気でしたか?」