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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
「私・・あなたのお役に立ててよかった・・ほんとうによかった・・
ねぇ涼輔さん、春までは待てないわ。アトリエを訪ねてもいいかしら?」
会いたい。今すぐにでも会いたくなった。
「ええ、いいですよ。花のない庭でよければ。
ただ明日は授賞式があって、その後は仲間たちがパーティーを開いてくれるって言うんで
明々後日、三日後でもいいかな?」
「はい。じゃあ明々後日、涼輔さんの好きなお菓子を焼いていきますね」
「うれしいな!楽しみにしていますよ」
電話を切ってもなお、興奮の呼吸を繰り返しながらケータイを握りしめていた。
電話したら彼が出た・・帰ってきていた・・3日後には会える・・
美紗緒の体は嬉しさのあまり小さく震える。
どれをとっても些細な事なのに、
人生の歯車が勢いを増してまわりだしたようにさえ思える。
それほど心を弾ませる、涼輔という男。
薄らいでいた恋心が熱を取り戻しよみがえった瞬間だった。