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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
いよいよ明日、涼輔に会いに行く。
持っていくお菓子は何にしようかと、夕飯の支度を終えた後に
レシピ本をめくっていた時だった。
康文の車のエンジン音が聞こえた。
いつもと変わらぬ時間に帰宅。
たぶん、いつもと同じように玄関のドアを開けて
何も言わずにリビングへとやってくるであろう夫を待つ。
すると今夜は、ドアを開けた時からいつもと違う様子に嫌でも気づかされた。
荒々しく廊下を踏み鳴らす音。
ただ事じゃない、そうすぐに感じ取った。
「美紗緒!おい!美紗緒、いるのか?」
足音だけじゃない。
声までもが荒々しい。
いったい何があったというのだろう・・
リビングのドアがバンと音をたてた。
はじかれた様に振り向くと、肩で大きく息をする康文が何かを握りしめて立っていた。
「おかえりなさい。あなた、どうかしたの?」
荒い鼻息をひとつ、それからテーブルの上に叩きつけるようにして
手の中のそれを置く。
薄っぺらい、パンフレットのような紙だった。
康文の顔を見上げてからゆっくりとその紙に手を伸ばす。
[第23回 日本絵画展]
大きな文字がどっしりと構える。
目にした瞬間、康文の怒りの様な激しさの意味が理解できた。
たぶん・・この見開きの中には・・・