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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き

私です、そう答えなくても美紗緒が言い返した台詞は、
康文への立派な答えだった。
唇を震わせる夫は、押し殺した声で問う。

「この男の前で・・裸をさらしたんだな・・それだけで済んだのか・・?」

つまりは・・
この男と関係したのか、そう聞かれている。
美紗緒はさすがに、ここは嘘を言うべきだ、と大きく頭を振る。
どう答えても信じられるわけはないだろう。
男の前で全裸をさらし、何時間も相対するのだから。
だったら違う、と否定したほうが自分のためでも康文のためでもあると思った。

「あなたの考えるような事は・・していません。
 モデルとしての仕事を全うしただけです。」

すがるような目を向ける妻を、100%信じようという気はないというのが
ありありとわかるような目で、康文は美紗緒を睨みつける。

その愛情のかけらも感じられないような眼差しに、
美紗緒の中の我慢の殻にヒビが走る。
考える間もなく、言葉があふれ出す。

「そんなに・・私のことが信じられないんですか・・
 そんなに・・愛情が冷めてしまったんですか・・
 やっぱり、私が子供を産めなくなったからですか・・?
 本当は今でも子供が欲しいと思っているんじゃないんですか?
 だから私に辛く当たるんじゃないの?」


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