この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
私です、そう答えなくても美紗緒が言い返した台詞は、
康文への立派な答えだった。
唇を震わせる夫は、押し殺した声で問う。
「この男の前で・・裸をさらしたんだな・・それだけで済んだのか・・?」
つまりは・・
この男と関係したのか、そう聞かれている。
美紗緒はさすがに、ここは嘘を言うべきだ、と大きく頭を振る。
どう答えても信じられるわけはないだろう。
男の前で全裸をさらし、何時間も相対するのだから。
だったら違う、と否定したほうが自分のためでも康文のためでもあると思った。
「あなたの考えるような事は・・していません。
モデルとしての仕事を全うしただけです。」
すがるような目を向ける妻を、100%信じようという気はないというのが
ありありとわかるような目で、康文は美紗緒を睨みつける。
その愛情のかけらも感じられないような眼差しに、
美紗緒の中の我慢の殻にヒビが走る。
考える間もなく、言葉があふれ出す。
「そんなに・・私のことが信じられないんですか・・
そんなに・・愛情が冷めてしまったんですか・・
やっぱり、私が子供を産めなくなったからですか・・?
本当は今でも子供が欲しいと思っているんじゃないんですか?
だから私に辛く当たるんじゃないの?」