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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
今まで聞いたことのないような、棘のある妻の声に康文は眼を見開いた。
喉の奥に引っかかったような呼吸をした。
「わかった・・勝手にしろ」
出て行こうとする妻を止めることなく、吐き捨てるような短い言葉の後、
リビングから出ていくと再び玄関ドアを開けた。
そして車のエンジン音。
その音が小さくなって、聞こえなくなった時、美紗緒は静かに涙を流した。
康文との別れを、受け入れた。
・・これで・・よかったんだ・・・
美紗緒はリビングの真ん中に座り込んで天井を見上げた。
どこか角ばった自分たち夫婦。
仲が悪いわけではないが、仲の良い夫婦とは言えなかった。
流産してからの10年余り、いつも引け目を感じながらなんとか夫についてきた。
でももう限界なのかもしれない。
いやもっと早くに別れていればよかったのかもしれない。
私よりも若い相手と再婚して、そうすれば、父親になるという彼の想いは叶えられる・・