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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
荷造りを終えてバッグを目の前にすると、先ほどまでの突進したような感情は
急に骨組みを失い、不安に駆られた。
康文との別れを決めたものの、あのままあっさりと自分の暴走を受け入れたかのような夫の態度に寂しさを感じるのは当然だ。
必死に引き止められたら、きっと気も静まり冷静に考えようと深呼吸できた。
だけど夫は、勝手にしろと言っただけで出て行ってしまった。
夜の闇を見つめながらやっと、事の重大さに体を震わせた。
涼輔に会えると楽しみにしている明日を前に
こんな人生の節目が訪れるなんて・・
時計の針が日付が変わったことを知らせる。
康文は帰ってこない。
美紗緒はベッドに入った。
眠れないだろうけど、横になった。
目が覚めたら、何事もなかったようにいつもと同じ朝だった・・
そうはならないことは自分が一番よく解っているのに・・
強く閉じた瞼からは、熱い滴が流れ落ちた。