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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
身支度を整えた後、テーブルに腰を落ち着けて手紙を書いた。
康文へ、これまで世話になった事へのお礼と勝手をすることの詫びを
あまり多くない言葉数で書き連ねた。
そして最後に、こんなにも簡単に夫婦を解消することを決めたことへの驚きを、
わずかの嫌味をこめて書き記した。
出来上がった手紙を読み返しながら、自分自身への驚きも感じていた。
康文ばかりを責められない。
自分だって、あっさりと別れを認め、出ていくと決めてしまったのだから。
手紙を離婚届の横に並べてペンを重し代わりに置く。
それから部屋の中をぐるりと見渡す。
この家で幸せに暮らした頃を思い出しながら
待っている未来への扉を開けるつもりで、玄関のドアを閉めた。
・・さようなら・・
門を閉じ、大きな屋敷を振り返ってやっと、涙がすじとなって流れた。
物言わぬ静かな高級住宅街は、いつもと変わらぬ佇まいで
出ていく住人を見送っていた。