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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
座り慣れたアトリエのソファに美紗緒を落ち着かせると、床に座り込んだ涼輔は
その手を取りながら心配そうに見上げた。
その視線を感じ取ると、さっきまでこらえていた涙はなぜか潮が引くように薄らぎ、
言葉がすんなりと口をついて出てきた。
裸婦画のモデルをしたことが夫にわかってしまった事、
責められて、子供の産めない私だから辛く当たるのかと言い返したら
夫は何も答えなかった事、
出ていくといったら勝手にしろとあっさりと別れを受け入れられてしまった事・・
あの時の康文とのやり取りを再現するかのように事細かに涼輔に話して聞かせた。
美紗緒にしてはめずらしく、興奮の色をにじませながら。
「でもね・・主人ばかりが悪いわけではないと思うの。
簡単に出ていくといった私も・・きっとあなたへの想いのほうが勝っていたのよ。
涼輔さんへの気持ちのほうが・・私には大事だった・・」
曇りのない心、とはこう言う事を言うのだろうと、正直な自分の言葉に頷いた。