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最後の一色
第2章 男が求めるのは

誰もが持つであろう疑問。
率直にぶつけてみた。

田原は、曇りなく単に疑問を解決したいと言うつもりで聞いてみたのだが、
美紗緒の口は思うように動かない。
その様子からなにか訳があるのは間違いないだろうと勘ぐった。

しばらく気まずい沈黙が居座ったので、ここいらで話題を変えようと
田原は明るい声音で再び口を開いた。

「まぁいろいろ事情がおありなんだろうし、これから1ヶ月お付き合いしていくのですから
 もし気が向いたら、おしゃべりでもしてください。
 で、住いを伺ったのは、僕のアトリエは
 小田急線の豪徳寺なもんですから、通いにくくなければいいなと思いまして」

「そういうことですか・・ええ、大丈夫です。一度乗り換えをするだけですから」

「では交通費は別途支払いますので、勤務初日に金額をお伺いしますね」

「あ、でも・・」

「交通費は普通時給とは別ですよ。これはごく普通のことですから」

田原はやれやれ、といった感じで肩を下ろす。
その様子を見て美紗緒は肩をすぼめた。



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