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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き

「今日からここがあなたの家です。小さくて狭い家だし、
ゆとりのある生活とは言えないような暮らしになるけど、それでもいいですか?
いや、それでもここにいてください」
美紗緒の瞳をまっすぐに見据え、涼輔は固い決意を静かにぶつける。
受け取る美紗緒の眼にも迷いの色はなかった。
「私のほうこそ、あなたの側においてください、死ぬまでずっと・・」
はい、という返事は唇の中で聞えた。
すかさず重ねられた唇の中で、聞こえた。
情熱的な口づけは、愛を確かめる気持ちを急がせる。
早く体で確かめたい・・
美紗緒の逸る心を涼輔はすぐに察したが、
「今すぐじゃなくてもいいでしょう?夜は長いんだから」
と、美紗緒の体を離した。
「夜・・あなたが帰らなくていいことを確認したいんだ。だから、ね?」
美紗緒は笑った。
子供じみた涼輔の言葉に少し呆れて笑った。
自分も同じ思いであることは隠して。
「じゃあさっそく・・夕飯の買い物に行こうよ。久しぶりだから・・
僕の食べたいものにしてもいいかな?」
「はいはい、なんでも好きなものをどうぞ」
手を取り合って2人は立ち上がった。
迷いや躊躇いの時間はみじんもなく2人での人生が始まった。
まだ青さのない庭の草木は乾いた音で2人を送り出す。
帰ってきてもまた、同じ音で迎えることを知りながら・・・

