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最後の一色
第3章 冷たい夫
「おかえりなさい。食事の支度、できてます」
「そう・・てっきり今夜から働いてくるのかと思って外で済ませてきた。
・・やっぱり、ホステスなんかできないって、あきらめて帰ってきたのか?」
嫌味な色を浮かべたその口元を見つめながら美紗緒は唇をかんだ。
「だからといって許したりしないぞ。
金はちゃんと返してもらう。
おまえのようなお人よしは一度くらいこういう試練を味わったほうがいいんだ」
風呂に入る、と冷たく言い放った康文はジャケットを押し付けると
バスルームへと足音を響かせながら入っていった。
廊下に残された美紗緒は、目にうっすらと涙をためたが、
決して流れ落としはしなかった。
仕事は見つかったんだ。
お金は返せるんだ。
康文が風呂から出てきたら明るい声で報告しよう・・
テーブルの上の食事を自分の分だけ温めながら、細い息を長く吐き出した。