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最後の一色
第4章 初日

どうぞ、とうながされアトリエに入ると、絵の具の匂いが漂ってきた。
広々とした部屋の壁際に、革張りの大きなソファがどっしりとした存在感を示している。
あの新宿の喫茶店にあった椅子のようにアンティーク調の、いやもしかしたら
本物のアンティーク家具かもしれない。
そのソファから少し離れたところにイーゼルが置いてあり、
真っ白なキャンバスが立てかけられていた。

窓の外には草花がそよそよと揺れている。
ガラス戸をあけるとハーブの香りが流れ込む。

「すてきなアトリエですね。こんなに草花があふれて・・
 このおうちもかわいらしいわ」

あどけない少女のような表情で、庭から部屋から眺めまわす。
美紗緒は久しぶりに童心に帰った気分になった。


美紗緒がアトリエの中を歩き回っている間に、涼輔はお茶を用意してくれていた。
こちらへどうぞ、と少しは慣れたところから声がした。
振り返ると、キッチンから涼輔が顔をのぞかしていた。




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