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最後の一色
第4章 初日
無のような、そうじゃないような、なんとも言えない空白に思いをめぐらせていたら
あっという間に時間は過ぎていた。
すでに1時間を超えているという。
「すみません、夢中になっていて時計を見るのを忘れてました。
今日はここまでにしましょう。お疲れ様でした」
立ち上がった涼輔は、美紗緒には近づかなかった。
ガウンをかけてやるような事もせず、
淡々と自分の作業の後片付けをしている。
少し・・想像と違っていたことに気の抜けた感もある美紗緒はゆっくりと起き上がり、
床に置かれたままのガウンを拾い上げた。
「あの・・ごめんなさい・・せっかく私のために用意してくださった物を
落としたままにしてしまって・・」
今頃になって気づいたことに恥ずかしさを覚えた。
でもあの瞬間は、ガウンのシワなど考える余裕なんてなかった。
「ああ、いいんです、気にしないで。
床に脱ぎ捨てられたガウンも絵の一部ですから」
そう言われてホッとした。
気の利かない女だと思われなくてよかった。
美紗緒はガウンを羽織り、
涼輔の後姿に一礼すると、寝室へと足を速めた。