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最後の一色
第4章 初日
夏の陽射しのおかげでまだ電気のいらない明るいアトリエの中で、
涼輔はスケッチブックを開いた。
簡単な線で描かれたデッサンだが、
そこに形を成していく女の姿を想像して細く長い息を吐いた。
思っていた以上に、理想のモデルだった。
顔の美しさは彼女の顔を見れば誰でも、判断できる。
だがまさしく生まれたままの姿は、誰でもが目にできるわけではない。
正直、顔が美しいからといって裸体も美しいとは限らない。
小さすぎたり大きすぎたりする乳房、ウエストのくびれ具合、
大腿部についた筋肉や下腹部の脂肪。
そのどれもがパーフェクトであることはまずない。
彼女の乳房も少し小ぶりだった。
だが形が良かった。
コロンとした丸さが、手を伸ばしたい衝動に駆られる。
女として男の下半身を揺さぶるきれいな体であったことを思いだすと、
口元がニヤッと歪んだ。
それよりも、絵画展に出品するのをこれで最後と区切りをつけるための作品に
ふさわしいモデルが見つかったことが、何よりも嬉しい。
きっと納得のいく絵が描けるだろう。
鈴野美紗緒・・
久しぶりに心を突いてくれる愛らしい女だ・・
暮れかかる空を、ガラス越しに見上げてから
まだ白いままのキャンバスに目を移した。