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最後の一色
第4章 初日


「どうだ?久しぶりの仕事は。
 いくら家事の延長みたいなお手伝いの仕事でも働いて稼ぐという事が
 楽じゃないとわかっただろう?」

晩酌をしながら康文は、疲労感を見せない妻に
さぐるような目で聞いてきた。

夫はきっと、疲労の色をたっぷりとただよわせる妻を想像していたのだろうが、
それに反して気持ちが上向いているような美紗緒の姿に、
肩すかしをくらったようにつまらなさをにじませていた。

それに気づいたが、美紗緒はまるで感じていないふりをしながら笑顔を返した。

「ええ、確かに大変だけど・・でも楽しみながら仕事ができて、
 とても気に入ったの、この仕事」

余裕さえ見えるその返答を聞いて、康文はグラスの中の水割りを一気に飲み干すと、
おもしろくなさそうな顔を向けてから書斎へと入っていった。


それにしても・・
どうしてこうも私に辛く当たるのだろう・・
今回の事だけじゃない。
もう何年も前からたびたび私に辛く当たる・・

やはりあの事が原因か、と美紗緒は宙を見た。




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