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最後の一色
第4章 初日
30歳の時。
結婚4年目で美紗緒は妊娠した。
一回り年上の夫は40超えてやっと父親になるのだと、喜びに舞い上がっていたが、
不幸な事に身重の美紗緒は事故寸前の出来事で流産してしまった。
静かな路地裏を買い物袋を提げてのんびりと歩いていると、
曲がり角から急に自転車が飛び出してきて、
ぶつかりはしなかったがその時に驚いて身をよけたはずみに転倒してしまった。
そして・・
お腹の子が犠牲になった。
自転車はそのまま走り去り、おなかを押さえてうずくまって苦しむ妊婦を
発見してくれたのは、それから5分以上たってからの事だった。
救急車で運ばれた病院で流産が告げられると、狂ったように泣き叫んだ。
駆けつけた夫も、拳を壁に叩きつけながら悲しみと怒りに震えていた。
その流産をきっかけに、美紗緒は妊娠がむずかしい体となった。
夫は、もちろん妻を責めたりはしなかったが、父親になることが絶望的になってくると
潮が引いていくように妻への愛情が冷めていった。
求める回数も減っていったし、中身の薄いセックスになっていった。
狂おしいほどの愛情を感じることもなくなったし、
抱かれている時に感じていたあの幸福感も
尾を引くように薄れていった・・