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最後の一色
第6章 5日目
ポーズをとっている間、なにを考えるでもなく
視線の先にあるものを見つめているだけだったが、この時間に、
しゃべりたい事、聞きたい事を口にしてみようという、気持ちのゆとりが出てきた。
美紗緒は、あの・・と、か細い声を絞り出す。
顔を動かさないまま口を動かすのは、案外むずかしい、と思った。
「・・おしゃべりしても・・いいですか?」
美紗緒のこの言葉を、涼輔は待っていた。
この人を知りたい・・その気持ちは涼輔の中でも日に日に膨らんでいた。
だけど、自分からあれこれ聞いて彼女の気に障るような事をしてしまったら、と
憶病になっていた。
「ええ、どうぞ、なんでも好きなようにおしゃべりしてください。
ただし、動かないように、ね」
「はい・・」
クスリと笑う美紗緒がさっそく動いた。
涼輔がすかさず突っ込む。
さざ波のような笑い声が流れた後、美紗緒は語り始めた。