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最後の一色
第6章 5日目

「あ、笑ってる間にコーヒー冷めちゃいましたね、淹れなおしましょう」

立ち上がろうとした涼輔を美紗緒は制する。

「いえ、大丈夫です、それよりマドレーヌ、どうぞ召し上がって」

そうだった。
手にしたまま笑っていて、まだ食べてはいなかった。

美紗緒に見つめられながらマドレーヌを口に押し込む。
品の良いバターの風味が鼻の奥を擽る。
思った通り美味しかった。

「うん、間違いなく美味しい。きっと料理も上手なんでしょうね」

久しぶりのお世辞に自分で照れながらクッキーにも手を伸ばす。
こちらも美味しかった。

「そう言えば今・・40近い、って言ってましたけど・・そんなには見えないですよ」

さっき美紗緒は、自身の年齢のヒントを言った。
そこまで聞いてしまったら、知りたい、と思うのが人情だ。
ましてや、30そこそこくらいにしか見えないと思っていたのだから余計に、だ。



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