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最後の一色
第6章 5日目
フッとかすかな苛立ちを吐き出す。
言葉が続くまで、しばし間があった。
「私のことなんかたいして気にしていないから、主人は・・」
その横顔は今まで見た美紗緒の表情の中でいちばん厳しくて
かすかな怒りさえ見せていた。
思わず涼輔は息の飲む。
そんな顔をするくらい、夫との間にわだかまる何かがあるのだろうかと想像して、
涼輔もまた小さな息を吐きだした。
それに気づいた美紗緒は恥ずかしそうに頭を下げる。
ごめんなさい、またみっともないことを、と
わざとらしいくらい甲高い声で謝ってから立ち上がり、
食器を片づけ洗い始めた。
「あ、いいんですよ、そのままで」
涼輔が手でさえぎっても美紗緒は構わず食器を洗い続けた。
自宅のキッチンよりもはるかに狭いこのかわいらしいキッチンが、
自分の城だったら気が楽かもしれない・・
流れる水の音だけが響き、
窓の外は次第に夕闇へと変化を見せていく・・・