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最後の一色
第7章 6日目

「絵は・・ギャラリーなんかで細々と売っています。
 たまには企業のカレンダーに使ってもらったり」

「どんな絵が多いんですか?」

「風景画や静物画がほとんどです」

「じゃあ・・裸婦画は?」

「これが初めてなんです・・」

「えっ?」

驚きの声とともに美紗緒は身を起してしまった。
まさか初めての裸婦画とは思ってもみなかった。

「ほら、動いちゃダメですよ」

画家は、他人事のように笑っている。
でも美紗緒は笑えない。
別に怒っていて笑えないわけではない。
意外過ぎる答えだからだ。

ハトが豆鉄砲をくらった、と形容したくなるような女の顔をさほど気にもせず、
涼輔は続ける。

「恋人も含め、女性は何度か描きました。全裸ではなく半裸のね。
 体に花を飾ったり布をかけたり。正直言うと・・
 全裸を描き切れる自信がなかったんです。僕にそこまでの力があるかどうか・・」

沈黙のまま筆を進める画家から次の言葉が出てくるまで、モデルも黙って待つ。

突然、ジリジリと慌てるような蝉の声がした。
美紗緒は軒先に視線だけを送った。


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