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最後の一色
第10章 13日目
立ち上がって腰を90度に曲げて頭を下げる美紗緒が、こんなに勇ましいとは意外だった。
しっかりと声を張り上げるなんて驚いた。
そこまで思うのなら、と彼女の行為に甘えてもいいものだろうか。
返事がすんなりとでてこない間、蝉の声だけが2人の間を流れていた。
生温かな風は、カーテンを揺らし、必死の眼差しで自分を見つめる女の髪を揺らしていた。
「でも・・ほんとうにいいんですか?そんなに甘えてしまって。
・・正直、僕も日に一万円が精いっぱいなんです。
これまでも残業代こみで、なんて甘えてきたけど・・
半日近くここで働いてくれるってことでしょう?」
美紗緒は無言のまま、めいっぱいの笑顔を作ってうなづく。
この顔が答えです、と言わんばかりに。
「かえってご迷惑かも知れないけど、私、このお家がとっても好きなの。
居心地がいいの。心が安らぐの・・
昼間は・・ううん、昼だけじゃない、夜遅くまで一人なの・・
大きなリビングの中でポツンと一人・・だったら
ここでお掃除したり庭のハーブを手入れしたりしたいの。
ガーデニング、したことないから是非やってみたいの。だから、お願いします」