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最後の一色
第10章 13日目
次から次から流れ出てきた心の叫び。
子どものいない美紗緒は夫が仕事に出かけてから帰ってくるまで、
たぶん広いであろうその家の中でたった一人で過ごしている。
そのうえ夫との間にわだかまりの様なものがあるような事をちらつかせていた。
だからよけいに、寂しさを紛わせたいのだろう。
その気持ちは男の自分にも解る気がする。
美紗緒の申し出を受けよう、お願いしようと涼輔は心を決めた。
甘えてもらって甘えよう。
わかりました、と首を縦に振った。
「では遠慮なく、お願いすることにします。
特に時間を決めませんから、美紗緒さんの都合の良いようにしてください」
「ああ、よかった!ありがとうございます。
なんでもやりますから、遠慮なく言いつけてくださいね」
跳ねるような仕草を見せながら美紗緒は笑顔を崩した。
ほんとうなら手も叩きたいくらい。
それほど嬉しいのは、孤独から解放されるだけでじゃなく、このアトリエに来られること、
涼輔との時間が増えること、美紗緒にとっての安らぎを得られるからだ。