この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
最後の一色
第11章 14日目
「まずはお掃除、始めますね」
美紗緒も負けじと声を張り上げ、エプロンを身につけると
キッチンの掃除から取り掛かった。
ここはキッチンもトイレもバスルームも、自宅と違って掃除するスペースが圧倒的に狭い。
自宅は広くて、最新の設備がそろっていて便利だが、
無機質な感じが掃除をし終えた達成感をしぼませてしまう。
おまけにいつもきれいに整えていても、康文がいちいち褒めてくれるわけじゃない。
そんな愚痴めいた思いが作業の手を止める。
・・今は涼輔さんのために・・
呪文のように唱えながらせっせと手を動かす。
水回りを終えた頃には涼輔もアトリエで準備を始めたので、
寝室の掃除に取り掛かろうと後姿に声をかけた。
「次、寝室のお掃除しますね」
振り返ると、エプロン姿の美紗緒に心臓が大きく波打った。
別れた恋人の幻を見たようなそんな気がして、
掃除機を下げて寝室へと入っていく美紗緒の後ろをついていった。