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今宵ワタシの胸の中で
第3章 始発に乗った夜に
「お疲れ様でした~。」

ほぼ徹夜で始発に乗った。仮眠するように始発で座れた電車の中で寝たけど、仕事中、眠くて仕方なかった。

金曜日だけど、飲みにも行かず、彼氏と別れた女は家に帰って寝るのよ~!と自虐的になる。

「はぁ。疲れた…。眠い…。はぁ…。」

深いため息をつきながら、自分の家へ帰る路線の電車に乗り込む。

「はぁ。」

最寄り駅まで2駅…ドアにもたれるように立つ。こんな近い場所に家があるのによくあんなに遠い駅から仕事に行ってたなぁ…

終わってしまった恋…振り返ってみればみるほど、私だけが損な恋愛だった。

まあ、もういいや。昨日、別れ話をしてそのまま彼の家を飛び出した。

始発までかなり時間はあったけど…あの人から何も連絡はなかった。あの人はそういう人。

今朝、挨拶してくれた駅員さんみたいに優しい笑顔を向けてくれる人だったら良かったのに…

そんな無い物ねだりの考えをしながら、電車の外を見る。

外は暗くて、灯りだけが鮮明に見える。ガラスに映る電車の中の様子…

あっ!あの人…ガラスに映った人を見て驚いた。

さっき私が思い出していた駅員さん。私服だけど、間違いないと思う。

だって、私の方にニコニコしながら向かってくる。

「あの~間違っていたらすみません。今朝、○○駅で僕と挨拶しました?」

はい。と、言葉なく頷く。どうして、こんなにタイミング良く貴方が現れるの?

「良かった…。どうして、この路線に?」

安堵したような、ちょっと考えているような顔をして、私に話しかける。

「私の家、次の駅なので。あの駅は元カレの家があって…。」

アハハと、愛想笑いをして駅員さんをみると、ちょっと困ったように笑ってる。

「元カレ?」

「今日、別れたので…」

そう言ってもチクリとも胸が痛まない…逆の意味で重症だよね。

そんなことを考えていると、私の降りる駅に着く。

「じゃあ、さようなら。」

そう挨拶をする。今日、この駅員さんに朝も夜も挨拶してる…なんか変なの。
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