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らぶあど encore!
第34章 祈り
あぐりが言葉を失い立ち止まると、カナも足を止めて低い声で言う。
『ほら、以前会社に拳銃を持って立て籠った中野さんって守衛さん……あの人だって会長の長い付き合いらしいですけど……元々は分けのわからないチンピラだったって話ですよ?なのに岸会長がどういうわけだか気に入って会社に入れて、長年重要なポストを任せてたんですよね……その結果ほなみさんは大事には至らなかったけれどやつのせいで怪我をして……一歩間違えばどうなってたかわからなかった』
中野という岸コーポレーションに長年勤務していた守衛。守衛というのは表向きで、実は汚れた仕事――表向きでは言えないような業務を任されていたらしい――中野は智也に心酔し、当時智也の妻だったほなみと恋に堕ちたミュージシャンの西本祐樹を怨み、祐樹とほなみを別れさせようとするが上手くいかなかった。会社で智也と祐樹の話し合いをするも、そこへ突然中野は現れて拳銃を手に祐樹にほなみと別れるように迫り、祐樹を亡きものにしようと刃を振り上げ、庇ったほなみが怪我をしたのだ。
あの事件の時はあぐりは元夫との離婚の話し合いの最中だったが、騒ぎを聞いて震え上がった。
とにかくほなみが無事であって欲しい、と願うだけだった。