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らぶあど encore!
第34章 祈り
『景子の事……このタイミングで亮介君にばらすとか……今のバンドの状況からすると、結構よろしくないんじゃない?まあ、確かに、カナちんが暴露しなくたっていつか分かる事かも知れないけどさ、岸のおじさまが敢えて黙認してたっていうのは、きっと何か考えがあっての事だと思うんだ。それをカナちんの判断で、あんな風にゲロッちゃうのって大丈夫なのかなってさ~思ったわけ。私はね』
『……私……』
カナの瞳に表情が戻り、みるみるうちに涙が溢れ、あぐりは彼女の頭を優しく叩く。
『智也の事とか、ほなみの事を心配に思うのは分かるよ。私だってそうだから……でも、一体どうしちゃったのよ、カナちんらしくないよ?』
『う……ううう……うえええええっ』
肩を大きく上下させて嗚咽するカナを、あぐりは階段の踊場でそっと抱き締めた。