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らぶあど encore!
第34章 祈り
「俺……ほなみの事も、赤ん坊も守るって言ったのに……なんか、行動が伴ってないよな……」
祐樹は苦味を噛み締める様に唇を結ぶと、じっと見詰めてくるほなみの額に掛かる前髪をそっとかき上げ、その感触を確かめるように指でなぞる。
「ほら、あの優男のセンセに怒られたじゃん、俺」
「透先生……?ううん、先生は西君に怒ってなんて」
「俺はぐさーっときたんだよ」
祐樹は、結婚して夫婦となって、ほなみを腕の中に包んでいても安心出来なかった。ほなみは自分を愛しているし、自分も狂おしい程にほなみを愛している――けれど、ようやく手にした幸せが何かの切っ掛けで壊れてしまうのではないか、と何処かで恐れていたのかも知れない。
ほなみと出会ったのは運命だ――そう信じて疑わなかったが、反面、智也からほなみを奪った形になる今の生活に罪悪感を持っていたのだろうか?
智也はクレッシェンドのビジネパートナーとなり、それだけではなく今や祐樹の友人でもある。
彼は別れたほなみの事を未だ気遣う優しさを持ち、いち企業家としても素晴らしい腕を持っている。
彼の人格を知れば知るほど、ほなみが自分を選んだのはなぜなのか、と純粋な疑問が湧き、ほなみに問い質したくなる事がたびたびあった。