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らぶあど encore!
第34章 祈り
「救急の先生、怖かったな……」
自分の父親くらいの年齢であろうと思われる、ほなみを診察した医者の落ち着いた物言いの中に垣間見える厳しさを思い出し、祐樹は溜め息混じりに呟いた。数多き患者、その家族を見て来たであろう医者の目尻には経験の深さと人間を観察する鋭さを思わせる深い皺があった。
直接祐樹が何かの注意を受けた訳ではないが、医者の言わんとするところは以前透に諭された事と同じなのだろう。
透は自分と同じ位の年齢で、取っつきやすい雰囲気だが、今日の医者からは無言の圧が感じられ、祐樹は珍しく小さくなってしまった。
「え?そう?」
ほなみが笑い混じりに祐樹を見上げると、祐樹のしなやかな長い指が頬に滑り降り、ほなみの顎を持ち上げる。
ほなみが彼の表情を確認する前に、彼の前髪で視界が塞がれ、唇を奪われた。