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らぶあど encore!
第35章 祈り②
「ふふ……どうしたの?そんな顔して……」
「し、知らないっ」
ほなみは祐樹の手をはね除けてソファから身体を起こそうとするがバランスを崩して祐樹が支えて抱き締められる格好になる。
「あぶね~……部屋の中でも転んだりしたら一大事だよ?」
「……っ……う……うん」
彼と出会い、恋をして――いや、正確に言えばほなみは彼に出会う前から恋していた――テレビの画面の中、鍵盤をそのしなやかな指で流麗でリズミカルな調べを紡ぎ、低い涼やかな声で歌っていた西本祐樹に、一目で心をさらわれた。そして彼と実際に会って益々恋の炎は烈しく燃え、会うたびに身体中がときめきに震えて、会っていない時でさえ瞼の裏に彼の姿が浮かぶだけで涙が滲むほどに彼に恋して――
夫婦となった今でも彼にドキドキしてしまう。彼に笑いかけられるだけで馬鹿みたいに舞い上がってしまう。どうしてこんなに恋しいのか。いつになったらこのドキドキは収まるのか――永遠に無理な気がする――今のところは。
祐樹がほなみの顔を覗き込み、悪戯をする小さな子供を叱るように声色を少し険しくするが、同時に堪らなくいとおしい気持ちが込められているその瞳には頬を染めて見つめ返してくる愛妻の姿が映っている。