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らぶあど encore!
第37章 暴発する想い
「ふん……メルヘンのお城に住む王子さまと言ったところか……が……王子の皮を被った獣かも知れんぞ……」
綾波は、後ろで気を失ったままのカナをチラリと見、ガレージに駐車する。
智也が運転席のドアの向こうから軽く頭を下げるがカナの姿が見当たらないのに訝しげに眉をひそめた。綾波が唇を歪め後ろを振り返ると、察した智也は後部席のドアを開け、予想外の場所でカナが寝転がっているのを発見し、呆気に取られて目を見開くが、片頬をピクリと震わせ笑った。
「御苦労様……一緒に酒でも、といいたい所だがーー」
智也はカナを抱きかかえ、運転席の綾波とカナを交互に見る。
「そうだな。今は色々と立て込んでるしな……また落ち着いたらな」
綾波がハンドルの横で緑に光るデジタルの数字を気にする。
「これから東京にトンボ返りか……気を付けろよ」
「おう。お前も、カナをキツく叱ったりするなよ」
カナが眠ったまま小さく欠伸をした。智也は優しい眼差しで彼女を見詰めてから走り去る綾波の車に手を振り、屋敷の中へ戻った。