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らぶあど encore!
第7章 ライヴ=人生?②
「全く……煩いったらありゃしない……」
景子は、久し振りに電話を掛けてきた母が、相変わらずの小言しか言わない事にうんざりしていた。
百歩譲っても、愛情ある言葉とはとても思えない叱責をいくつも並べ立てて景子を屈伏させるやり方は昔から変わらない。
親子だからと言って、気持ちが通じ合うばかりではない。
自分の母子関係は少なくとも良い物とは言えないのだろう、と景子は前々から思っていた。
不意に、先程の祐樹の涼やかな笑顔が頭に過り苦々しく唇を噛む。
今まで、景子が笑いかけたり気のある素振りをみせれば大抵の男は堕ちたのに。
西本祐樹と言えば、表向きは
"人気バンドクレッシェンドの笑顔の可愛い好青年"
というイメージだが、今まで散々ファンに手を出したりして来たのは業界の中では有名な話だった。
余程別れかたが上手いのか、今時の女の子達がドライなのかは分からないが、数多い女性との交際が表沙汰になる事がなかったのは奇跡だ。
だが人妻のほなみと恋に落ちて、熱愛宣言をしてドームライヴでは結婚式をしたり、最近はすっかりほなみ一筋になっている。
だが、所詮祐樹も男。
美しく理知的な魅力の景子が近付いて甘く囁けば堕ちると踏んでいたが、さっぱり思い通りにならない。
「意外としぶとい男ね……」
景子が呟いた。