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らぶあど encore!
第10章 sugar escort
「ただいま――っ」
カナの元気な声がして、あぐりとほなみは顔を見合わせて笑う。
ドタドタ足音を響かせながら、カナはバッグを放り出す。
今日は特別に早退をさせてもらっているのだ。
「ひゃあ~!
一本電車に乗り遅れた――!
時間、大丈夫ですか?」
「慌てなくて大丈夫だって~
家の中で走るのは危ないわよ~落ち着きなさいっ」
あぐりはカナにワンピースをいくつか宛がう。
「カナちゃん……
毎日二時間かけて通勤、大変でしょう?
暫く、こっちの支社に勤務とか、して貰えないの?
……カナちゃんにも無理させて、心苦しいわ……」
ほなみが言うと、カナは首をブンブン振る。
「いいんですよっ!
私が勝手に言い出してここに来てるんですから!
やっぱり、一人でも多く、ほなみさんの側に付いていた方が安心じゃないですか!
それに、電車に乗るの、私好きだし……
苦にならないから大丈夫です!」
カナは、少しだけ嘘をついた。
確かに、東京の支社なら通勤は楽になるが、本社にいた方が智也に会える確率が高い。
いや、殆ど本社にも来ないのだが、突然ふらっと来る事もなきにしもあらずなのだ。
それにしても、それだけの動機でわざわざ遠距離通勤は手間なのかも知れない。
でも、そこまでの手間をかけてでも、カナは智也に会えるチャンスをひとつでも多くしたいのだった。