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らぶあど encore!
第14章 それぞれの、朝 ①
景子は、流れる涙を隠しもせずに亮介を強い眼差しで射抜いた。
亮介も、景子の瞳を受け止めていた。
今、決して逸らしてはいけない、そんな気がするのだ。
景子の胸の中は、史との事、洋平の事、亮介への不確かなときめきで渦巻いていた。
自分でどうしたら良いのか分からない。
どんなに雑に扱われても利用されているかも知れなくても、洋平の父親である史の事を嫌いにはなれない。
洋平との未来を掴む為に、クレッシェンドを、亮介を踏み台にするのだ。
その為に自分はこうして居る。
けれど、このままだと、そんな事を一切忘れて亮介の優しさに、甘い囁きに溺れてしまいそうになる。
(けれど、亮介は……目の前に居るこの人は、私が欲しい言葉を口にしてくれない――)
涙を止めどなく溢れさせる景子を、亮介は困った様な苦しい様な、しかし甘い笑顔で見つめている。
(――私が、欲しい言葉?)
景子は、自分の胸に浮かんだその答えに、驚愕した。
(私は……
この人に、言って欲しいと思っている……)