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らぶあど encore!
第16章 不穏な前兆
月曜日の病院はやはり混雑していたが、外科は奇跡的に空いていて、然程待たずに診て貰えた。
念の為にレントゲンを撮影したが、骨にも異常は無く、激しい運動をせずにいれば二、三日で痛みは取れるだろうと医者に言われ、亮介は大袈裟に喜んでみせた。
医者に
『傷が残ったりしませんか?』
とか
『ハイヒールが二度と履けなくなったりしませんかっ?
俺、景子ちゃんが高いヒールでカツカツ音を立てて颯爽と歩く姿に痺れるんです――!』
などと、聞かれてもいない事を大真面目に言い、医者は苦笑いし、看護士達もクスクス笑っていた。
「大病や大怪我じゃないんだから……もうっ」
景子は恥ずかしさにまだむくれていた。
「でも良かったよ。
大した事なくて」
亮介は景子に合わせてゆっくり歩を進めながら、景子の頭にキスした。
「ちょっと……!
こんな所で」
景子は言い掛けて、身体を硬直させ立ち止まった。
「――景子ちゃん?」
亮介が覗き込むと、景子の目は前方を向いて、驚きに見開かれ、そして熱を持った様に潤んでいる。