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らぶあど encore!
第16章 不穏な前兆
景子は、二人が去った方向を唇を噛み見つめていたが、躊躇いがちに亮介の方を向き、また下を向く。
亮介は、景子の手を握る力を強くした。
「……何故、黙ってたの?」
「――」
亮介の表情は優しげだが、だからこそ怖い、と景子は思った。
(怖い……て、何故?)
景子は自分の心の動きに戸惑う。
亮介はいつも優しくて、母の言葉からも庇ってくれた。
何故そんなに寛容に優しくなれるのだろうか?
冷淡な両親と長い間暮らし、まともな友人関係も殆ど無い景子には、亮介の優しさが信じられなくもあった。
嬉しい、とは思う。
けれどそれ以上に、何故?
と思ってしまう。
「亮介君――」
景子が口を開いた時、聞き覚えのある声に二人は振り返ったが、すぐに唖然とする。