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らぶあど encore!
第19章 心~crossroads
だが、景子が妊娠したと告げた時には、史の中での彼女への興味は一気に褪めてしまった。
「私……妊娠したの」
と言われた時、史は冷めた声で
「だから何だよ……
この間、ゴム無しでしてって言ったのはお前だ……
それで妊娠したからって俺に責任取れってか?
大体、俺の子供なのかよ」
と言い放ち、景子を追い出した。
後で、やり過ぎたか、と少し景子が心配になったが、もしも困ればまた訪ねてくるだろうと思った。
史は、綺麗なルックスのお陰で女に不自由した事はなかった。
だが、心から愛した女も特に居なかった。
今まで関係を持った女は皆、綺麗で魅力的だったが、史が他の女の影をちらつかせた途端に皆、般若の様な形相で史を責め、時には泣きわめき、そして気が済むと史の前から去っていった。
「私だけを見てよ!」
と食い下がったのは景子が初めてだったのだ。
だから、史は景子だけは、自分にとって特別な女になるのかも知れない、と一時期思っていた。
だが、子供となると別だ。
史は、ミュージシャンになる夢をまだ捨てていなかった。
学生の頃組んでいたバンドでコンテストに出て準グランプリを取り、デビューの話が舞い込んだが、プロデューサーに
「君のやる音楽は、売れ線じゃないんだよね。
方向性変えようか」
と言われ、史は激昂し、他のメンバーも史の気持ちを尊重し、デビューの話を蹴ったのだ。
「史は、そのままのやり方が合ってるよ」
そう言ってくれたメンバーとも、高校卒業を境に皆バラバラになり、会う事も無くなった。
史はそれからバイトをしながらバンドを組んだり解散させたりの繰り返しだったが、ある日、バイト中に、店のテレビで新人のピアノロックバンドを偶然見掛け、衝撃で持っていたグラスを落としてしまった。
そのバンドは、
"クレッシェンド"
高校の時、一緒に組んでいた同級生達だった。