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らぶあど encore!
第23章 秘密のライヴ
景子の心の中に、今や亮介が深く入り込んでいて、史への気持ちは消えたのか?と思う事もあったが、先程史がほなみを抱き締めているのを見た時に、
自分の胸の奥に小さな焔がちらついた。
史は、ほなみに惹かれている。
史自身は気付いて居ないかも知れない。
ただ単に、クレッシェンドを陥れる為にほなみに近づいているだけ、と言うだろう。
だが、彼がほなみを見詰める眼差しの中には、温かさと憧憬の色が存在している。
(史が、あんな顔をするなんて……)
偶然通りかかったという史が、嬉しそうにほなみを抱き締めて居たが、ほなみにじっと見られた時に、ふと頬を赤らめて
「ああ~ごめん、おねーさん」
と言って彼女を離したのだ。
そんな史の仕草も表情も、景子は知らない。
かつて自分に、そんな物が向けられた事があったろうか?
(私とほなみ、どう違うって言うの……
私は、史の子供を産んでいるのよ?)
嫉妬なのか、女としてのプライドが傷ついた為か、父親にも夫にもならない史への怒りなのか――
夢中でステージを見るほなみの横で、景子の胸の中は暗い感情がとぐろを巻いていた。