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らぶあど encore!
第23章 秘密のライヴ
それなのに、史の仕打ちは酷い。
史のご機嫌を窺うのにもいい加減疲れた――
景子は、何もかもを投げ出したい気持ちになっていた。
そこへ、時田が甘く囁く。
「……無駄な抵抗は止めたのかな?」
「そうね……」
「やっり――じゃあ、美味しく頂いちゃおうかな」
時田はゴクリと喉を鳴らすと、景子の胸元のボタンに手を掛けた。
自暴自棄になった景子が、もうどうにでもなれ、と瞼を閉じたとき、シュンと空を切る音と共に時田の後頭部に何かが直撃し、彼は悲鳴を上げて崩れた。
唖然とする景子の前に、ドラムスの鈴置護(すずおきまもる)が呆れ顔で現れ、時田に命中したスティッキを拾い上げる。
「そう言う破廉恥な事は、ライヴ終了後に誰の目にも触れない場所でやっていただきたい」
低い平坦な口調で言う彼は、サイドだけ緑にカラーリングした髪を耳に掛けながら、黒縁眼鏡の奥の冷たい目で二人を睨んだ。