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らぶあど encore!
第23章 秘密のライヴ
「ふう……」
景子は、なんだかどっと疲れてしまい、無意識に史が触れた頭に掌で触れる。
優しい触れかただった。
今までこんな風に、柔らかく触れた事など無かったのに。
ファンのアンコールに応えたり、色々と史らしくない、と思った。
益々、史の真意がわからない。
景子は重い脚を引き摺るように、ステージ袖へと向かった。
椅子に座るほなみの華奢な背中が見えると、また嫉妬が沸き上がる。
――史と笑い合ったりして、一体あの子は何を話していたの?
史……貴方は、本当に、目的の為だけにほなみに笑いかけて居るの?
景子のハイヒールの音に気付き、ほなみは振り返り日溜まりのような笑顔を向けてきた。
「景子ちゃん、立ちっぱなしで疲れてない?
……あ、向こうにもうひとつ椅子があるよ、持ってこようか」
「大丈夫よ、ほなみこそ、無理してない?」
然り気無い思い遣りを景子に向けるほなみに憎しみを抱く事が出来ず、景子は笑顔を返してしまう。
まるで自分が馬鹿みたいに思えた。