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らぶあど encore!
第23章 秘密のライヴ
胸に染み入る様な切ないアコーステイックギターの調べが聴こえてきて、ほなみはステージの方へ視線を移す。
スポットライトを浴びて、神々しい程の美しい姿の史が椅子に座ってアコギを弾く姿に会場から溜め息が漏れる。
史がバラードを演るのは非常に珍しい事なのだ。
ファンの中には感激のあまり、歌い始める前から啜り泣く者も居る。
史がチラリとこちらを見て、魅惑的に笑いかけるが、ほなみは曖昧に笑みを返すしかなかった。
景子に置き去りにされてしまい、どうしたものかとスマホを出して祐樹のアドレスを指で触れそうになるが、思い直して溜め息を吐く。
今、レコーデイングの追い込みなのはほなみも知っている。
普通の会社勤めのサラリーマンとは違い、何時から何時まで、という明確な終わりがないのがミュージシャンの仕事なのだ。
特にレコーデイング作業は、メンバーとスタッフとの共同作業だ。
どちらかも納得するクオリティーに仕上がらなければ、作業は終わらない。
ほなみが今連絡すれば、祐樹は直ぐに飛んで来るだろう。
だが、自分の事で作業を中断して欲しくない。
ほなみは史のバラードを心此処にあらずな状態で聞き流し、スマホの画面を見て考え込む。