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らぶあど encore!
第23章 秘密のライヴ
アンコールでバラードをやろう、と思い立ったのは、ほなみに聴かせたいと思ったからだった。
ステージの袖で目を輝かせている彼女に、聴かせたいと――
思えばあの時、自分は祐樹への恨みつらみを忘れていた様な気がする。
祐樹の女を物にして、鼻をあかしてやろうと思っていた筈だった。
そして、ほなみが泣いているのを見た瞬間、自分の身体が勝手に動いて、景子を問い詰めていた。
そう言えば景子は今どうしているだろうか。ほなみに叱られて、史は初めて自分が景子に良くない事をしてしまったのに気付いた。
いつも自分の利益や、自分の得になる事、自分が気持ちよくなる事しか考えて居ない史は、他人がどう思おうと関係ない、というスタンスで生きてきた。
自分を殺して人に合わせるなんて御免だ――
物心ついた頃からそういう考えなのだ。
だが、ほなみと居ると、いつもの自分ではなくなってしまう。
景子の気持ちなど考えてみた事もないのに、ほなみに真摯に叱責されて、自分の中のチューニングが狂ってしまった。
いや、元の自分が狂っていたのだろうか、とさえ思ってしまう。
目の前のほなみの真っ直ぐな眼差しに囚われつつある自分を史は自覚した。