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らぶあど encore!
第23章 秘密のライヴ
流石の史も、路上なら兎も角、ステージを途中放り出す事は初めてだった。
だが、バラードを歌っているのにほなみがこちらを見ていない事に、堪らなく苛立った。
居ても立っても居られなくて、身体が勝手に動いていたのだ。
今まで特定の誰かにここまで執着した事は無かったのに。ほなみが自分の方を向いていない――ただそれだけの事に堪らなく苛立って、腹が立った。
俺の方を向け――こっちを向けよ!!と叫び出しそうだった。
――何なんだ……俺は……これじゃあまるで……
史が小さく舌打ちをしたその時、ほなみが史の手を取ってライヴハウスの方に向かって歩き出した。
柔らかく小さなその感触にどぎまぎしながら、史は言う。
「……な、なんだよ……」
「私も一緒に戻ります」
「えええ?」
「もしも誰も居なくても、私が聴くから……だから、戻って歌って?」
「……ほなみ」
史は、立ち止まると、ほなみを突然抱きかかえ、走り出した。